照れまん君の 涙のカノン  「負けないで」

 
                  【 涙のカノン ♪♪♪ 負けないで ♪♪♪ 】
 
        私は1990年代、まったく入院生活をしていた。 
        入院したことの無い若い人達は、多いと思いますが、最近の病院は色々工夫
       されていて、結構楽しい。
 
        私の入院していた病院の科では、毎週2回カラオケ大会があった。 
       火曜と木曜の午後2時から30分、10人ほどが食堂兼面会所でマイクを持って歌っていた。
        午前10時に、看護婦詰め所前にカラオケの申し込み用紙が出されると、自分の名前と
       曲名と歌手名を書く。 
        看護婦さんが予約の順番にカラオケをセットしてくれていて、2時になると次々に曲が
       流れ歌いだす。 
        希望者の多い時には早く行かないと歌えないので、10時の詰め所前に列が出来る。 
       患者はしょっちゅう入れ替わるので、カラオケがあまり好きでない人が多いと、
       予約が四~五人しかいない時もあり、そういう時は時間が余るので、「ふるさと」や
       「上を向いて歩こう」などが入れてあり、みんなで歌っていた。
 
        私は生まれてこの方、一度もカラオケは歌った事が無いので、病院でも歌ったことは無い。
        マイクから出てくる自分の声が変なのと、すごい音痴なので嫌いなのです。
        どうしても歌えと言われても歌う曲が無い。
        歌詞を覚えているのはたった一曲しかない。 
        そのなけなしの一曲が「君が代」なので歌うに歌えない。
                           
        90年代中頃、このカラオケ大会に、必ず毎回二人は歌う人気の高い曲があった。 
       それが、ZARD の「負けないで」だった。
        この曲は病人にぴったりの元気の出る曲。
        歌っているとノリが良くて、何だか明るくなれるし、歌詞もとてもいい。 
        病人の為の応援歌のような感じの曲だった。
 
        私はこの曲を知らなかったが、毎回二人は歌うのでいつの間にか覚えてしまい、
       テレビの大画面の歌詞を見ながら口ずさんでいた。 若い女の子や男の子がCDを持っていて、
       ラジカセで聞かせてくれ、色々教えてくれた。
 
        ZARDって初めて聞いた時、変な名前だなと思った。 サードならすぐ解るのに・・・・? 
       歌っている坂井泉水ちゃんは人気があり、大好きと若者達が言っていた。
       テレビには絶対に出てこないよ、とも言っていた。
 
        ♪       ♪       ♪       ♪       ♪      ♪
                  
        この曲を最初に聴いた時、バロック音楽の何かの曲に似ているなと思っていたが、
       すぐには思い出せなかった。 
        そのうち、毎週何回も聞いてるうちに謎が解けた。
        この曲は、パッフェルベルのカノンに似ていると・・・。 
       
        パッフェルベルのカノンはたった2小節で出来ている。 
        通奏低音は2小節の同じことを何度も何度も繰り返す。 
        その上に第1Vnがメロディーを弾くと、2小節遅れで第2Vnが同じメロディーを弾き始める。 
       また2小節遅れで第3Vnが出て来て、同じ旋律を弾き始める。
        カノンは輪唱と同じで、「カエルの歌」を歌っていると思えばいい。 
       次々に新しい旋律が出て来て、それを第2、第3Vnが模倣していく。 
       したがって、楽譜一枚あれば演奏できる事になる。 
        通奏低音と3つのVn で出来ている。
 
        途中にとっても有名な旋律が出てくる所がある。
        (山下達郎さんの、クリスマス・イヴ の間奏部分に使われています)
       とても素敵で魅力的。 簡単だけれどもとってもいい曲である。
                 
        どう聴いても旋律は似てはいないが、よく聴くと和音進行がとてもよく似ているのです。 
       まったく一緒と言っていいかも知れません。
        パッフェルベルのカノンは二長調。 たった2小節に8個の和音がある。 和音進行はこうです。
 
           D A Bm F♯m |G D G A
 
        これはゆっくりした2小節なので、旋律を楽譜に書くと32分音符という、髭が3本も付いた
       細かい音符が現れる。
        この和音進行を四小節にして、調性を同じにしてやればいい。
        「負けないで」は何調だったか憶えていないが、もし ト長調だったら、
           G D |Em  Bm |C G |C(Am) D    負けないで~ となる。
        これを、二長調に直すと、
 
           D A Bm Fm  G  D  G  A     となり、まったく同じです。
 
        「さび」の部分で、パッフェルベルのカノンと同じように、この部分を何度も何度も
       繰り返すのです。 まったく同じです。 
       ピアニストかギター奏者に弾いてもらうと、同じ和音進行だと言う事がよく解るはずです。
 
        パッフェルベルのカノンでは、27通りの旋律が出てくるが、28番目の旋律が
       「負けないで」と思うとちょっと嬉しくなる。 
       「負けないで」の他に、KANの「愛は勝つ」や岡村孝子の「夢をあきらめないで」など、
       その他多くの曲に、このカノン進行が使われている。
 
       1680年頃に作曲された曲の和音と、1993年ごろ作曲された最新のヒット曲が同じ和音進行
      だと言うのがちょっと面白い。 我々が最新だと思っていることが実は長い歴史の中に培われて
      誕生しているのだと言うことに気付かされる。 
       バロック時代の人達が心地良いと思った事は、今の人達にとっても大変心地良いのです。
       西洋音楽は、バロック時代にほぼ基礎的な理論は完成しました。 
       その後、複雑な和音や不協和音、変拍子、リズムの喪失など現代音楽は日々進化、
      作曲されていても、普段歌われている歌謡曲やポップスは基本的なところでは変わって
      いないのです。 
       今でもいい曲はいい曲なのです。
    
      ♪        ♪         ♪        ♪        ♪       ♪          
 
       多くの病人達が励まされた「負けないで」。 
       励まされたこちら側がおめおめと生き延びていて、励ました方の坂井泉水さんが先に亡くなる
      なんて、世の中解らないものです。 あんなに綺麗で才能のある人が早く死ぬなんて・・・・。 
       私はずっとテレビに出てくるのを楽しみにしていたのに、とうとう見ることは出来ませんでした。 
       亡くなってからワイドショーの番組で、昔の映像をやっと見ることが出来ました。
       本人はきっとテレビに出て、自分の言葉で多くの人に語りかけたかったのではないだろうかと
      思ったりしています。 
       最後の最期に、
      「私達に今の今をもっともっと大切に、一所懸命生きるように!」
      と、教えてくれているような気がします。
 
                 今はただ手を合わせるしかありません。            合掌 
     
    
                負けないで黄泉の国まで黄沙降る       照れまん 
 
                                              (離心円へのメールより)                      
 
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照れまん君の 涙のカノン  「負けないで」 への4件のフィードバック

  1. Pu'uwai より:

    それでカノンを聴いているとゆりかごに揺られているような気分になるのですね。
     
    連れ戻したやいたこの風   プウバイ
     

  2. のら より:

    こんばんは
     
    「パッフェルベルのカノン」は聴いたことがありません。
    いや、聴いたことがあったのかも知れないのですが覚えていません。
    そして、照れまんさんと同じように坂井泉水さんを見たことがないのです。
    大勢の人が励まされた、その人が先に逝くなんて辻褄が合わないですね、ほんと。
    「負けないで」は高校の教科書にも載ってると言ってました。
     
    バロックの中に現れた和音進行が300年を隔てて、現代の音楽に生かされているのは
    とてもうれしいことですね。
    「バッフェルベルのカノン」を聴きたくなりました。
     
    ところで音楽家の照れまんさんが音痴だというのが納得いかないですけど・・・。
    最後まで知っている歌詞が「君が代」だなんて・・・。

  3. 照れまん より:

    Pu`uwaiさん
    読んで下さってありがとう御座います。
    ポピュラーにアレンジされてレイモン・ルフェーブルだったでしょうか?
    「涙のカノン」って言う題名になってますよね。アレンジの方も大好きです。
    とてもいい題名だなと思っています。
    また宜しく、お願いします。
                                    照れまん

  4. 照れまん より:

          のらさんへ
    パッフェルベルのカノンは「君が代」とほとんど同じくらいのテンポです。
    超スローです。
    大相撲の千秋楽。テレビに合わせて、思わず「君が代」を歌っちゃいました。
    では、またよろしく。
                                     照れまん

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