照れまん君の運動会 「ハードル競争」

                    
        ハードル競争
 少し前の話になりますが、久しぶりに中学校の運動会を見学に行った時の話。
 若い人達が走ったり踊ったりするのはとても華やかで気持ちがいい。
こちらも、少し若返るような気がする。
 ついこの前まで、自分がこうやって走っていたのにと思うと、時間の早さを感じ、
妙な感傷に浸ってしまう。
 私達の頃と全く変わらぬ競技もあれば、すごく工夫して新しい競技もある。
次々にプログラムが進む中、続いて女子のハードル競争になった。
 真っ直ぐなコースに、たった3台のハードルが置いてある、比較的簡単な競技。
女子生徒が整列し、スタート位置に移動すると、全員が腰を下ろした。
1組目が立ち上がり、位置に付くと、「ヨーイ・ドン」 でスタートした。
 1台目のハードルは全員が飛び越えたが、2台目のハードルは飛び越えられない者が
出てしまい、ハードルの横をすり抜けていった。
 飛び越えられない者の為に、ハードルとハードルの間に少し隙間が開けてあるようだ。
3台のハードルを飛び越えた者も居るが、2台目・3台目は飛び越えられない者も居た。
 〈女子なので仕方ないのかな と、思いながら眺めていた。 〉
 続いて2組目がスタートした。
 1台目のハードルを飛び越えた者も居たが、1台目からすでに飛び越えられない者が
出てしまい、1台目を飛び越えた者も、2台目・3台目は飛び越えないで横をすり抜けていった。
 この組では、1台もハードルを飛び越えない者が出てしまった。
 〈女子といえども、どーなっているんだろうと、ちょっと、不思議な気がする 〉
 続いて、3組目がスタートした。
 この組では、もはや誰もハードルを飛び越えようとはせず、全員がハードルの横をすり
抜けていった。
 〈こうなったら、ハードル競争では無いではないか と、狐につままれたような感じがしてきた〉
 これだけ沢山の教師が居て何も言わないのにも腹が立ってくる。
予行演習はしてないのか?今どきの学校教育はどうなっているのかと疑問にさえなってくる。
 続いて、4組目がスタートした。やはり誰一人ハードルは飛ばず、横をすり抜けていった。
 〈もうこうなってくると腹が立ってくるのを通り越してむなしくさえなってくる
 この生徒達はいったい何を考えているのだろうか。これで、満足なのだろうか  〉
 奇妙なテレパシーのようなものが出ていて、跳ぶ者はダサいぞと言うのであろう。
何かが伝染してしまったようである。
 しかし、教師と言うのは実に情け無いものだなと思う。
これだけ大勢の前で、何一つ注意することが出来ないのです。
 それに、親も何百人居ても、まともな躾すら出来てないのかと思うと悲しくなってくる
 ハ-ドル競争ではなく、ただの徒競走にすればよかったのにと思うが、まさかこんな簡単な
競技でこんな事になろうとは、誰も予想出来ないだろう。
 続いて5組目がスタートした。
やはり、誰一人ハードルは飛び越えようとはせず、横をすりぬけていく。
 ところが、この組に妙に走るのが遅い子が居て、皆が3台目のハードルをすり抜けていった頃、
ようやく1台目のハードルに差し掛かかった。
 ビリを走っていた子は何を思ったか、思いっきりジャンプし、みごと1台目のハードルを
飛び越えたそして、2台目のハードルに差し掛かった。これも見事に飛び越えた。
 その時には、ズルをして横をすり抜けて行った生徒達は、とっくにゴールしていた。
 ビリの子には、もう1台ハードルが残っている。この子は一生懸命走って居るのだが、
走り方がぎこちなく、歩くのが少し速いぐらいにスピードが落ちていた。
やっと、3台目のハードルに差し掛かった。
 「エイーッ!」と思いっきり足を高く上げジャンプしたのだが、飛び越えるだけの勢い
が無くなっていた。
 足がハードルに引っ掛かってしまい、バランスを崩し、奇妙な形で地面に「ドターッ」と、
叩きつけられてしまった
 その瞬間、みんな「あ――っ!」と息を呑んだ。
何と、何と、足が千切れてしまったのです。  
   
 担任と養護の先生らしき2人の先生が飛び出して行き、この子を抱きかかえ、
泥を払っている。そして、足をくっつけているのです。
 どうやら、この子は義足らしい。
 先生はこの子を抱き抱え、,医務室に連れて行くのかと思ったら、この子は立ち上がり、
先生に何かを訴えているようなのです。
 そのうち先生も わかったわかった と了解したらしく、倒れたハードルを元に戻すと、
三人でハードルの少し手前まで行った。
 まだ、3台目のハードルを飛び越えてないので、どうしても飛び越えたいのです
と訴えたようである。
 三人がハードルの少し手前に行くと、そこから助走を付け、一・二の三 でハードルを
飛び越えた。
 その時、二人の先生が両脇を抱え、思いっきり高く持ち上げ飛び越えさせてやった。
無事着地すると、この子は元気にゴールを目指して駈けて行った。
片足を少し引き摺りながら、一所懸命走って行った。
 会場からはどよめきが起き、図らずも拍手が沸き起こった。
目頭が熱くなり、涙が出そうになlった。
何とも言えぬ感動に胸が震えた。
       
 感動に浸っていたが、拍手が鳴り止むと、次の組がスタートした。
まだ、この競技は終っていなかったのだ。
 何となく、ぼんやりとしながら眺めていた。
 そうしたら、1台目のハードルを、何と全員が飛び越えたのです
2台目も全員がちゃんと飛び越えたのです。そして、3台目もちゃんと飛び越えたの
です。全員がすべてのハードルをちゃんと飛び越えたのです。
 〈どーなってるの、と 逆にこちらが驚いてしまった  〉
 その次の組も全員がちゃんとハードルを飛び越えたのです。
そして、最後の組まで誰一人ズルをすることなく、ちゃんと飛び越えたのです
 みんな出来るのです。ちゃんと飛び越えることが出来るのです。
 〈何故?どうして?とただただ呆気に取られてしまった〉
                      
 義足の子は、不正なことをすることも無く、転んでも起き上がり、3台のハードルを
ちゃんと飛び越え、最期の最期まできちんと走り抜けたのです。
 ズルをした子達は、今まで人間としてどう生きるか人間として正しく生きるとは
どういう事か。そんなことは、一度も問われたことなど無いのでしよう。
それを義足の子が問うたのです。
 教師も親も、何人いようとそんなことは教えていないのです。
 毎日学校へ行き、塾へ行き、家の中ではゲームをし、あれが欲しいこれが欲しい、
あれが食べたいこれが食べたいと、我がまま三昧に育ってきたのです。
その子達が、「あなたはどう生きるか?」 と、義足の子に問われたのです。
 釈迦やキリストなど、とても難しいことを言ってるようですが、そんな難しいことを言ってる
のではないのです。
 人間として正しい道、人間としてどう生きるかを説いているだけなのです。
そのことを、この子が釈迦やキリストに変わり、皆に教えたのです。
「私は人間として正しい道を、一生懸命、精一杯生きていきますと・・・・。
帰りの車の中で、この日の澄み切った秋晴れのように、私の心の中も
晴れ渡っていた。
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照れまん君の運動会 「ハードル競争」 への6件のフィードバック

  1. Pu'uwai より:

    お母さんは如何ですか。手術はまだのことと拝察いたしております。
    母は 入院してすぐに手術にはなりませんでした。
    病院側の日程があって4.5日待たされたようです。 お大事に。
     
    ハードルを越えて澄み切る運動会     プウバイ
     

  2. 照れまん より:

        Pu`wai  さん
    母のことを気にかけていただき、有難うございます。手術は2週間くらい先になりそうです。
    今までオムツをしたことがなく、寝ていてオムツが具合が悪いらしく、すぐはずすのでこまるようです。それと、寝とぼけて点滴を無意識に外すらしく、看護婦さんがこまっているようです。急にボケが進んだようです。
    今まで、休みもなく、長い間働いてきたので仕方ないかなと思っています。
    ではまた・・・。
              運動会一度転んだだけでびり       照れまん

  3. fujim より:

     どんなどんでん返しが来るんだろうと思いながら読んでいって、今日は泣いてしまいました。 (T_T)ウゥ・・・まだまだ捨てたものじゃあないじゃないですか、後に続く子供たちみんなも、たった一人の行動で何かを感じることができたんですからね。 それぞれがどんな見えない言葉で交し合ったんでしょうね。 胸になにかつきあがってきます。 彼の前に横を走り抜けてしまった子の、「しまった!」という取り返しのつかない自分への悔しい苛立たしい気持も教えることが出来たと思います。この話を読むことが出来てよかったです。 うれしかったです。 「しまった!」の中に自分が入ってなくてよかったです。   運動会せめてビリ2になりたいよ~    ふじ

  4. 照れまん より:

      Pu`uwai さん  Fujim さん ご報告があります
    私の母のことですが、昨日家族が食事をさせるのに、左手を使おうとしないので、主治医に伝えた所、明日朝検査してみましょうということになりました。それで、今朝 MRI を撮ってみた所、脳梗塞が判明。まずは、脳梗塞の治療を優先し、その経過を見て骨折の手術になりますが、当分難しいかも知れません、と言われたそうです。
    私も少し元気を出して、母の見舞いに行かんといけません。これからは、自分のことは自分でしなければなりません。
    どこのお家も、病人の居ないお家なんかないんですね。また、何か変わったことがありましたらお知らせいたします。
        朝顔のたった一輪ひらきをり            照れまん 

  5. fujim より:

     脳梗塞、ちょっと驚いています。それは転んだこととは関係ないことなんでしょうね。 強く打って梗塞ということはないですもんね。今まではお元気におうちのことをされてたんでしょうに、重なるときは重なるものです。 そんなものです。今ではいい薬もいい手立てもあることでしょう。 おまかせして、照れまんさんは照れまんさんの役割を懸命に果たしていけば何もおそれることはないと思いますよ。どこのお家も大なり小なり病院とは縁が切れない状態で、上手に?生活してるもんです。意気込みすぎて無理をしなくても大丈夫ですよ。 でも自分のことは自分で、これは辛いですね~、ネッ(^^)   一輪で照らせわが身を母の愛    ふじ

  6. Pu'uwai より:

     そうですか・・・・これが老いの道です。
    昔に返る便(よすが)はありません。 
    転んだことが原因ではなくて、気がつかない程度の脳梗塞があったから転んだのでしょう。
    軽いこと、悪い場所にないlことを願っています。
    けれども、天寿は神の決めることです。
    最善を尽くしてそれで良しと満足することを学ばないと苦しいです。
    そろそろsoloにお母様の思し召しだと有り難く思いましょうね。
     
    あさがおの咲きて凋んで夜が明ける         ぷうばい
     

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