照れまん君の俳句歳時記 「野分・颱風」

   玄関に海が来てをる野分かな   照れまん
 8月2日、台風5号が早くも山口県に上陸し、通り過ぎて行ったので、
今回はちょっと台風の話題を・・・。
  台風は古くは野分(のわき・のわけ)と呼ばれていました。
源氏物語にも「野分の段」というのがあるそうですから、相当古くから
そう呼ばれていたのでしょう。
 夏から秋にかけて南から吹く強い風のことを差しますが、今のように気象学が
進んでいるわけではないので、低気圧なども含めて、強い風を野分と呼んでいた
わけです。
 現在は気象庁が、熱帯地方に発生し、中心付近の最大風速が、
毎秒17・2メートル以上を台風と定めています。
 野分というのは、草木を分けて吹く強い風。
 野を分けて吹くので、野分と呼んだようです。
俳句では台風もよく使われますが、野分と言う古い言い方もよく使われます。
 この「野分」に素晴しい俳句がありますので、一句紹介します。
     鳥羽殿へ五六騎急ぐ野分かな      与謝蕪村
 これは、素晴しい俳句です。
 この句を理解するには、ちょっと平安時代のことを知らなければなりません。
皆さんは、保元・平治の乱というのをご存知ですよね。あの平清盛が出てくる
ものです。私自身「平家物語」を読んだのは随分昔なので、うる憶えですが、
掻い摘んで書いてみます。
 平安時代末期、藤原摂関家の中に内紛が起きます。
関白藤原忠道さんと言う人が居ます。この弟に20歳年下の頼長さんが居ます。
お兄ちゃんの忠道さんには男の子が居ないので、お父さんが末っ子で大変優秀な
頼長に、いずれは家督を譲るように進言します。
 お兄ちゃんはとても優しいお兄ちゃんなので「いいよ。」と了承します。
弟はすっかり自分が家督を継ぐものだと思い込んでいました。
 若・貴兄弟で言えば、
今はおにいちゃんが後を継ぐが、いずれは貴が部屋を継ぐんだぞ」
って言うようなもんです。弟は大変優秀なんです。
 ところが、しばらくして、お兄ちゃんに男の子が誕生しました。
お兄ちゃんのお嫁さんにしたら、これは嫡男ですから、この子が後を継ぐのが
当然です。
 弟や弟の嫁にしたらこれは困ります。
 そこで「早く家督を譲ってくれ」と言います。
 ところが、お兄ちゃんは優柔不断で「うん、うん」言いながらなかなか譲ろうと
しません。弟の嫁にしたら、早く譲ってもらわないと、いずれ自分の子供に家督を
渡したいと思いますが、それが叶わなくなります。
 そこで弟は、強引にお父さんを焚きつけ家督を譲らせます。
 お兄ちゃんは突然梯子を外された形になったので、怒ります。
 ここにもう一つ、天皇家でも問題が起きています。
 崇徳上皇と言う人がいます。この時、近衛天皇が17歳の若さで崩御した為、
自分が天皇に返り咲くか、自分の子供を天皇にさせようと思っていましたが、
前の鳥羽の院の第四皇子が、後白河天皇に即位します。
新天皇は上皇に院政が出来ないようにしてしまいます。
崇徳上皇にしてみれば「なんでやねん」ですよね。踏んだり蹴ったりです。
 まだまだ、その他、源氏の中でも身内の内紛。平氏の中でも親子の内紛。
もう何がなんだか解らなくなる程、入り乱れているわけです。簡単に話をすることが
難しいのです。
 ここに、佐々木氏土地問題の内紛に端を発し、それぞれがそれぞれと結び
ついて、保元の乱へと発展していくわけです。
  結局は、後白河天皇・藤原忠道(お兄ちゃん)・平清盛・源義朝連合の多国籍軍が
大勝利します。
 ところが3年後、連合軍側に内紛が起きます。
 天皇に優遇された平清盛とそうでない源義朝が戦争になります。
この結果は皆さんよくご存知のように平清盛が勝利するわけです。
これが平治の乱です。
 
 話を俳句に戻しますが、この話の少し以前に、白河上皇が鳥羽に城南離宮という
壮大な御殿を造営してました。これが鳥羽離宮と呼ばれ、通称「鳥羽殿(とばどの)」
呼ばれていました。ここに代々上皇が住み、院政を行なうようになっていたのです。
 この鳥羽殿に住む上皇側に味方しようと、五六騎の馬が駆けて行っていると
いうのです。
すわっ大乱かと、風雲急を告げているのです。まだ五六騎ですから、嵐の前の
前触れ、少しづつ強風が吹き始めているのです。
 大嵐・台風になるかも知れないという胸騒ぎ、不安感。それらがもののみごとに
表現されています。
 鎧武者が五六騎駆けるというピード感も、頭の中に映像が浮かびあがってきます。
 与謝蕪村600年近い前の出来事心象風景としてとらえ、みごとに俳句に
詠みあげた、名句中の名句です。
 ではでは、最期に恥ずかしながら、私も台風でもう一句。
     颱風禍ゴム長穿きて大臣来      照れまん
    ( たいふうか ごむながはきて だいじんく )
      
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照れまん君の俳句歳時記 「野分・颱風」 への6件のフィードバック

  1. Pu'uwai より:

     こんばんは
    そうか、嵐の前の静けさを5,6騎と野分にかけて時間を量る、
    歴史的背景を知らなければ全然意味不明な句になってしまうんですね。
     
    野分って言うと、田んぼの青いまっすぐ立っている稲が強風に煽られて稲妻型にさささと寝る、
    倒れるイメージしか湧かなくて、波濤や渦潮に思いが行かないのは私が山の幸の国の人だからでしょうね。
    では、私の意味不明の句を、、、
     
      綱とりをかけて渦巻く野分かな      プウバイ

  2. fujim より:

     こんにち○○○から帰ったところです。野分というととても優雅に聞こえますが、台風のことも言ってたんですね。与謝蕪村の句は、なるほど解説してもらって非常~によく、あのざわざわとした、「ン?なにかヘン」「さては、、、」というなにかの前触れ、緊張感が周りに伝わっていく感じが分かってきました。背景が分かってないと、な~に、馬が通った後の風のことを台風と間違えたの~? とまぬけな質問をしてしまいそうです。しかも心象風景として、ということは与謝蕪村さんも照れまんさんと同じぐらい歴史を知ってたということですねー。いったいいつどこで勉強したんですか? やっぱ芸短かなぁ~?今回避難勧告の出た地域は、前のとき(2・3年前?何年かもう忘れました)、玄関に海、車庫に海、ぷかぷか浮いた車が潮の引いたあとの畑に植わってました。完全にめちゃめちゃでした。 それで今回早めに勧告が出されたんでしょうね。うーん、私の苦手な歴史が俳句にも関係があったとは、、、、、でもここで解説してもらえるからよかったー!

  3. のら より:

    照れまんさん おはようさんです。
    日本史に登場する大勢の人たちがどういう時代にどういうことをしたのか、誰と誰が関わりがあるのかを知るのは興味深いことですね。
    しかしこれがなかなか書物を読んだだけではわかりません。そのときわかってもすぐにあやふやになっていきます。
    奈良の神社仏閣などに参詣すると「縁起」などを解説してもらえることがあります。そういう話の内容がおもしろくてけっこう記憶に残っているものです。
    ちょうどそういう話を聴くような気持ちで照れまんさんの今日の記事を読ませてもらいました。
    照れまんさん、歴史にも音楽にもその他もろもろに造詣が深いですね。感心するやら頭が下がるやらです。
    そして、蕪村もまた彼の時代を遡ること600年も前のことを心象風景として俳句に詠んだのもすごいと思います。
    当時は今ほど歴史に関する情報も豊富でなかっただろうし、どうやって勉強したんだろうと不思議です。
    今回も「楽しみながら覚える歴史教室」をありがとうございました。
     
    さて、阪神タイガースは照れまんさんが予想したとおり、3位に浮上しました。
    上から4チームのゲーム差はたった4.5 です。巨人・中日の試合次第では優勝の行方が微妙になる局面もありえますね。
    広島がんばれ、ヤクルトもがんばれ。

  4. 照れまん より:

       Pu`wai さん こんにちは
    綱とりをかけて渦巻く野分かな     相撲界と台風が掛けてあって、とっても面白い句ではないですか。
    毎日、同じような生活の繰り返しをしていると、俳句も川柳も、新しい発想が出なくなっちゃうんですよね。
    それで、Pu`wai さんの句を参考にして、新しい句が出来ないか、などと姑息なことを考えています。
    その昔、貴関( 弟 )が横綱だった頃に私が作った川柳ですけど書いてみます。
         中卒が大卒投げて綱を張る             照れまん      
     う~~ん 誰かが先に詠んでる様な気がしますが、まあいいか・・・ってな感じです。一番最近詠んだ川柳を書いてみます。
        台風と私の頭左巻き       イマイチ、直接すぎて駄目ですね。これは没句です。
    では、また宜しく・・・。

  5. 照れまん より:

        Fujim さんこんにちは
    きのう、台風が過ぎ去ったので、朝から台風のことをブログに書こうと決めて、すこし書き始めたんです。途中 一旦下書き保存して、よそのブログを覗いてみようかと、Fujim さんのところへ行ってみたら、もう台風の写真が載ってるんですよね。 ゲゲッ 早いなーとか思いながら シコシコ書いてました。
    夜、テレビを見ていたら、三田尻女子の 栗原恵ちゃんが出ているではないですか。彼女、高校2年の時、すでに身長が 186cmあったんですよ。今見ると、今も186cmと書いてあるんです。そんなことないだろう。186.5cmくらいにはなってないか?とか言いながらちょっとだけ見てました。ほんと可愛くて、女っぽくなりましたよね。
    じゃあ、また・・・。

  6. 照れまん より:

       のらさん こんばんは 
    いつも読んで下さって有難うございます。それにコメントまで頂き、すごい褒めていただいて恐縮します。
    すっかり野球のことを忘れていましたが、前半戦が終った時、新聞の切抜きを取っておいたので、書こう書こうと思いながら日にちが経ってしまいました。
    カープが歴史的大敗北を喫しそうなので、もう気が抜けちゃって、あとは巨人・中日・阪神で、頑張ってちょんまげ・・・、ってな感じです。
    これからは、夏の甲子園が始まるので、山口県代表の岩国高校を応援しようかと思っています。大坂は 桐蔭 が負けてがっくりです。絶対に見たかったのに・・・。でも仕方がないですよね。それから、最近、PL を見なくなりましたね。
    私は風邪を引くたびにお医者さんから貰う薬が PL 顆粒なんですけど・・・・。(しーーーん)
    では、また・・・。
     

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